座右の銘「承前啓後」

『承啓樓』の祖堂の門の對聯(門聯)には、次の句があるそうです。

承前啓後盡閲人間春色

繼往開來飽覽世紀風光

 

[書き下し]

 承前(しょうぜん)啓後(けいご)し、人間(じんかん)の春色(しゅんしょく)を盡閲(じんえつ)す。

 繼往(けいおう)開來(かいらい)し、世紀(せいき)の風光(ふうこう)を飽覽(ほうらん)す。

[訳]

 先人の志を受け継ぎ、未来を切り開こう。世間の楽しみを心ゆくまでたのしもうではないか。

 先祖・親に忠孝を尽くし、子を育もう。時代の移りゆく様を心ゆくまで見ようではないか。

 

中国の広東省潮州市饒平県饒洋鎮にある『劉氏宗祠』(劉氏の先祖を祭る祠)の『信祝堂』には次のように記されているそうです。

 

《『劉氏宗祠』は康煕年間(1662~1722)の始建で、光緒年間(1875~1908)に再建し、最近修理された》

饒洋鎮前洋 劉氏宗祠 信祝堂聯

 

◇大門 冠首聯

信誠存孝道千秋永盛 祝福行仁徳萬古彌昌

 

[書き下し]

 信誠(しんせい)は孝(こう)を存(そん)す道(みち)なり。千秋(せんしゅう)永盛(えいせい)。

 仁(じん)を行(おこな)う徳(とく)を祝福(しゅくふく)す。萬古(ばんこ)彌昌(びしょう)。

[訳]

 誠と孝を心掛け、礼と仁を行おう。一族の繁栄のために。

 

千秋:永久。 / 永盛:永く栄える

萬古:永久。 / 彌昌:ますます栄える

 

◇信祝堂内 柱聯

 承先啓後敦宗睦族  慎終追遠光祖耀宗

 華堂集瑞宗基永奠  興侖裕後光揚祖徳

 堂構重光祖上恩徳遠 宗族聚首裔孫福澤長

 

[書き下し]

 承先(しょうせん)啓後(けいご)し、宗(そう)を敦(あつ)くし族(ぞく)を睦(むつ)む。

 慎終(しんしゅう)追遠(ついえん)し、祖(そ)を光(てら)し宗(そう)を耀(てら)す。 

 華堂(かどう)集瑞(しゅうずい)、宗基(そうき)永奠(えいてん)。

 侖(りん)を興(おこ)し、後光(ごこう)を裕(ゆた)かにし、祖徳(そとく)を揚(あ)ぐ。 

 堂構(どうこう)重光(ちょうこう)、祖上(そじょう)の恩徳(おんとく)は遠(とお)し。

 宗族(そうぞく)聚首(しゅうしゅ)、裔孫(えいそん)の福澤(ふくたく)は長(なが)し。

[訳]

 承先啓後し、祖先は手厚く祭り家族は仲睦まじくしよう。慎終追遠し、ご先祖様に感謝しよう。

 そうすれば、一族は繁栄し、永遠に続いていくだろう。

 道理をわきまえ、陰徳を積んで、一族の徳を盛んにしよう。

 そうすれば、祖先の恩徳は計り知れず、子孫の幸福は永遠に続くだろう。

 

宗:祖先。先祖。 / 族:家族。一族。

敦:あつい。手厚い。重んずる。 / 睦:親しくする。仲良くする。

慎終追遠:親の喪に礼儀を尽くし、先祖の祭りに誠意をこめること。先祖を厚く弔い、忘れないこと。

華堂:美しい建物。 / 瑞:(天や神仏が示す)めでたいしるし。

集瑞:幸福が集まること。

華堂集瑞:家が繁栄することの形容。